沼落ちはとつぜんに

唐突にセクゾ沼に落ちた大人。語りたいので作りました。

夢と折り合いをつける-BACKBEAT感想-

先日、A.B.C-Z戸塚祥太くん主演、ふぉ~ゆ~の辰巳雄大くん出演のBACKBEATを観劇してきました。

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出演者全員最高に顔がよくて、音楽も良くて、とっても良いものをみたなあ、と思ったので感想を記しておきたいと思います。

デビューする前のビートルズハンブルク時代を描いた今作、戸塚くんのあんなシーンやこんなシーンが盛りだくさんの1幕もとっても良かったんですが、すごく心に残ったのが2幕で。

BACKBEATもまた、「夢と折り合いをつけていく」お話だなあ、と思いました。

 

子供の頃って、無邪気に夢を見ていたとおもうんですけど、大人になるにつれてだんだん難しくなってきますよね。それってなんでかな〜とおもうと、現実だったり自分のことだったりが分かってくるからかなあ、なんて思うんです。

陸上の為末大さんが「諦める力」という本の中で、「やりたいことではなく、自分にあったことをしなさい」というような話をしていたと思うんだけど、やりたいことと自分の能力って必ずしも一致しないんだよねえ。

一方で、応援屋の中で五関さん演じる桂馬さんが「自分は身長2メートルの馬鹿だ」(周囲に向いてるよ!と言われたばっかりに好きでもないことに時間を使ってしまった)という話をしてたみたいに、自分の能力や周囲の期待に合わせるばっかりに、自分を見失うっていうリスクもあるんですよね。

だからこそ、「自分の意思(=やりたいこと)」、「自分の能力(=できること)」、「周囲の期待(=求められていること)」のバランスを取ることが、大人の夢の叶え方なのかなあ、なんて思うんです。

 

BACKBEATは、そういう意味で、ビートルズの五人が、子供から大人になっていく様を描いた物語だなあ、と思います。「自分の意思」によるやりたいことだけを無邪気に追いかけられていた1幕と、「自分の能力」、「周囲の期待」を認識して、取捨選択を迫られていく2幕。

 

戸塚くん演じるスチュは、そもそも友達のジョンに誘われたからバンドに入っただけ、という役柄です。

1幕では5人での活動を通してバンドの活動も大切になっていく様子が描かれていますが、本質としては「画家」なんですよね。それをアストリッドとの出会いで思い出していく。「自分の意思」を思い出してしまうわけだ、良くも悪くも。

このタイミングでのスチュの夢は「ジョンたちとバンドを続けながらも、自分の本質である画家もやる」ことなのかなあ、と思います。

スチュの「能力」面を見ると、画家としては天才だけど、楽器はいつまでも上手くならない。それでも1幕の時点では良かったんだと思うんです。なぜなら、バンドが「プロ」じゃなかったから。下手でも、片手間でも、楽しければやっていけた時代。

それが許されなくなるのは、ポールを中心としたメンバーが「プロ」を目指すようになったからかなあ、と思うんです。そういう意味でスチュを変えたのはアストリッドではなくポールなのかも。

バンドがプロを目指すようになって、スチュの人生にも「他人の期待」というファクターが入ってきたのかな、と思いました。今までは下手でも許されたけど、楽器の上達をすることが求められる。そのために、アストリッドとの時間だったり画家になることだったりを諦めることを期待されていく。

でもここでスチュが選んだのはアストリッドと画家なんですよね。本番遅刻したりレコーディング欠席したりってシーンが象徴的だったと思うけど、「他人の期待」に沿うことを諦めて、ジョンとバンドをやりたい!という気持ちを諦めて、自分の本質と能力を大切にすることを選ぶ。そんな結末だったのかなあ、と思いました。一部を諦めて、夢の方を現実的な方向に寄せていったんだなあって。

 

「夢を現実に寄せていく」っていう作業、ほかのメンバーにも当てはまると思っていて。

例えばジョン。ジョンはわりと、自分の意思も能力も他人の期待も一致してて葛藤を抱えず前に進んでいけてるのかなあ、とも思うんだけど、諦めたものもある。それはスチュと自分のスタイルだと思っていて。

もちろんスチュの意思もあるけど、楽器の能力が劣るというところもあって、(ポールの希望も汲んで)大好きなスチュをバンドから外したシーンは、ああ、夢のために諦めたんだなあ、と思って泣けてしまった。

最後のデビューに向けてのレコーディングのシーンでも、自分のスタイルだったリーゼントをやめて、マッシュルームカット(ジョンのいうところのいい子ちゃんスタイル)に変えているのが象徴的だなあって。自分たちがもっと大きくなるために、「他人の期待」を意識せざるを得なくなった瞬間なんだなあ、と思ったりしました(余談ですけど、この髪型、自分たちが売れるために切ったスチュの髪型なの本当に皮肉だよね、、)

 

ちょっと話はずれますが、乱暴な言い方だけど、ジョンはスチュじゃなくてポールを選んだ、とも言える気がしていて、やっぱりそれも売れること、を見据えた結果かな〜とか思うんですが、

スチュを切れ!的なことを言ったポールに対するジョンの「俺はお前が正しいことを言う時が一番嫌いだ」みたいなセリフがめちゃめちゃ好きで。他人の期待なんか見えなくて(もしくはそんなものに縛られるのはカッコ悪いと思っていて)ひたすら自分の道を進もうとするジョンの手綱を握って軌道修正してくれるのがポールなんだよな〜〜!!!ポールがジョンに言う「全然違うタイプなのに、初めて言葉が通じる相手に出会った気分」みたいなセリフも最高でしたね、、。タイプが違うからこそお互いにお互いを引っ張って補い合ってるジョンとポールは最強のシンメ〜〜!!と思ったりしました。

 

話を戻すと、うまく折り合いをつけられなかったのがピートかなあ、などと思っていて。

ポールがスチュを切ろうとした時、「そんなことはさせない!」と言ったり、最後までリーゼントを貫いたり。

ピートにとって夢を叶えることは「オリジナルメンバーで」「自分たちのスタイルで」バンドを続けていくことであって、どれか一つでも欠けるわけにはいかなかったのかなあ、って。

(結果的に折り合いをつけられなかったピートはバンド側から切られてしまうわけですが、、うーん切ない!)

余談ですが、この何一つ譲らない、純粋に夢を追い続けるってすっごいカッコいいけど危険なことだな、と思っていて、そんなところを描いたのが昨年みた「いまを生きる」だったり、昨年一昨年のえび座の「ジャニーズ伝説」だったかなあと思ってます。

「いまを生きる」で宮近くんが演じたニールは、若さもあり、自分で選んだ道を歩けないことが許せず自ら死を選ぶ。彼はまだ子供だったから純粋さが仇になったのかなあとも思うけど、ちょっとだけ譲ること、夢を自分の状況に引き寄せることを知っていれば違った結末もあったかな、と思う。

「ジャニーズ伝説」の初代ジャニーズも、人気のゆえに他人の期待に応えざるを得ない状況に置かれて、それでも「自分のやりたいこと」と折り合いをつけることができずにグループを解散してしまう(乱暴だけど、この感じ解散に至るビートルズと重なる部分もある)

 

余談の余談だけど、「良い子はみんな〜」をみた時も思ったけれど、all or nothingの思想って結構怖いなって思っていて、少しでも譲れたら続いたもの、得られたものをみすみすと逃してしまうなーとか思ったり。良い子の堤さんも死にかけるしね。

 

じゃあ、自分の希望は二の次にして他人の期待や自分の能力に合ったことをし続ければいいのか!っていうとそれも違うな〜と思うんです。

BACKBEATではあんまり描かれないけど、デビューしてからのビートルズって自分たちの人気に振り回されていくわけです(あんまりこの辺明るくないのに偉そうですが汗)

個人的にはそういう時期の歌はちょっぴり切なくて皮肉で大好きだけど!

Help!の歌詞に「when i was younger so much younger than today i never needed anybody's help in any way」ってありますが、このyoungerってハンブルク時代かなーとか思ったりして。無邪気に夢を追いかけられていたあの頃。お金も名声もないのにある意味最強だったあの頃。

BACKBEATのラスト、あの頃を思い出して歌おうぜ!って言ってレコーディングしたツイストアンドシャウト、最高に切なくて最高にキラキラしてましたよね。ジャニーさんじゃないけど「子供は大人にはなれるけど、大人は子供には戻れない」んです。あの刹那的なきらめきは、夢と折り合いをつけて、ある意味賢くなるかわりに失われるものなのかなあ、と思います。

あとはコインロッカーベイビーズのハシとかみたいに、「本当の自分がわからなくなる」ことによって夢だったことが続かなくなるリスクってあるのかなあ、とも思うんですよね。

好きなことは仕事にするな!嫌いになるから!みたいなことよく聞いたりするけど、そういう感じかなあ(雑かよ)

他人の期待に応えすぎると自分がわからなくなるんですよね。

こう思うと、夢を実現するっていうことは、「自分の意思」「能力」「他人の期待」のバランスをうまくとっていく、っていう言い換えができるかな、と思いました。そのために、自分にとって大切なものの優先順位をきちんとつけていくことが大事かなって。

私はこの間転職したんですが、自分の仕事を取っても、前職の方が「やりたいこと」「マインド」みたいなものは合っているような気もしてるんだけど、今の仕事の方が「能力」や「他人からの期待」っていう意味では合ってるかなあ〜と思っていて、今の方がハッピーなんですよね。

私ってたぶんやりたいこととかマインドとかそこまで大事じゃなくて、人に評価してもらうこととかの方がモチベーションになる人なんだなーってこの歳になってわかるようになった。自分の夢(ってほどのものじゃないけど)が叶ったとは思えないけど、これはこれでありかなあって思ったりするんです。

 

それにしても(?)、スチュ、めちゃくちゃ戸塚くんでしたよね。スチュは本当の自分はミュージシャンじゃないって葛藤をずっと抱えているけれど、戸塚くんもアイドルという仕事と自分の本質のギャップとか葛藤とか全く隠さない人じゃないですか。

でも、スチュは画家になること(とアストリッドと一緒にいること)を選んでバンドやめちゃうけど戸塚くんはアイドル続けてくれてる。それってめちゃめちゃ奇跡だなーって思うんです。

でも、続けてくれているのはファンへの愛だったり責任感だったりってことも口にしてくれる戸塚くんは本当に優しくてつよいひとだなあって思って泣けちゃうんだよな〜。

アイドルしてる人たちって程度の差こそあれみんな本当の自分とアイドルの自分のギャップに葛藤を抱えていると思うんだけど、だからこそつよく不器用に、カッコつけずその葛藤を抱え続ける戸塚くんにはたくさんの後輩が慕ってるんだろうなって思ったり。

 

思いつくまま書いていたら長くなってしまった〜〜!まとまらないけどおわり!BACKBEAT 本当に見てよかったな!